6月は、梅雨(つゆ)の季節ですが、つゆという漢字は、梅の雨と書きます。この時期に梅の果実が収穫されますので、ピッタリではないかと思います。
梅は、古くは薬として重宝されていたと言われていますが、それは様々な種類の栄養素を含んでいるからです。梅に含まれる代表的な栄養素は、クエン酸やリンゴ酸などです。クエン酸は筋肉にたまった疲労物質である乳酸をエネルギーに変える働きがあります。レモンやミカンなど、柑橘系果物に含まれています。
梅の代表的な食品の一つに梅干しがあります。梅干しは、日本人の生活に欠かせないものとして、平安時代から鎌倉時代にかけて珍重されてきました。 梅干しの歴史をたどってみると、今から1300年前の奈良時代にさかのぼります。梅の塩漬けを薬として、食用していたと言われています。
医食同源という言葉があるように、日本では、庭に薬になる木や草を植えて、食用にしていたのです。柿、びわ、梅、松、橙、竹などを植えています。野草の中にも、イタドリ、ドクダミ、タンポポ、ヨモギは、薬として使用されていました。 「梅干し」が初めて書物に現れるのは平安時代中期です。
また、村上天皇(在位946〜967年)が疫病にかかったとき、梅干しと昆布を入れたお茶を飲んで回復されたという記録もあり、これが元旦に飲む縁起物として今に受け継がれている「大福茶」の起源とされています。
現在、ヘルシーでおいしい和食が、世界的なブームになっています。「和食」は、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録され、世界的に注目されています。 自然を尊重する日本人の心を表現したものであり、伝統的な社会慣習として世代を越えて受け継がれていると評価されたものです。
日本でも、和食のよさが再認識されつつあります。その和食を代表する食品が梅干しです。 梅干しは、健康志向が強い今、もっとも注目されている食品といっても過言ではありません。
そこで、梅干しを食べると、どんなふうに体に良いのかをざっと検証してみることにしましょう。梅干しには、主な効用として、疲労回復作用、病原菌の殺菌制作用があります。血液を弱アルカリ性に保つ働きもあるります。 梅にまつわる話で有名なのは、「飛梅伝説」ではないでしょうか。
飛梅伝説とは、「平安時代の貴族・菅原道真は、平安京朝廷内での藤原時平との政争に敗れて遠く大宰府へ左遷されることとなり、屋敷内の庭木のうち、日頃からとりわけ愛でてきた梅の木との別れを惜しみ、梅の木に語りかけるように詠んだのが、次の歌である。
「東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」
この歌を聞いた梅が、菅良道真公を慕って、京都から大宰府に飛んで行ったという故事です。この飛梅が、福岡の太宰府天満宮に現存しているということです。 ちなみに、菅原道真公は、平安時代の人ですが、現在、学問の神様として大宰府天満宮に祭られています。