學びて思はざれば則ち罔し

知識を得る本来の目的は、その知識を社会に活かすことにあります。知識を得ただけでは意味がありません。その知識を仕事に活かす、社会に活かす、様々な場面で活かすことが重要です。「活かす」とは、行動することです。

さて、今回、ご紹介する論語は、「學びて思はざれば則ち罔(くら)し。思ひて學ばざれば則ち殆(あやう)し。」です。
この意味は、「教わるばかりで、自分で考えることが少ないと力はつかない。自分で考えてばかりで、人に学ばないようだと、考えが偏るので危険このうえない。」ということです。

教えてもらうばかりで、自分で考えようとしない人は、自力で答えを出す力が養われないので、物事の本質を見抜く力が身につきません。見ているようで見ていない状態に陥ります。

逆に、自力で考えるばかりで、真実を学ぶことをしない人、あるいは、自分と違う意見を取り入れようとしない人は、考える思考の幅がとても狭くなり、自分の考えがすべて正しいと思い込み、独善的になりがちです。こうした状況になると、大変、危険な状況になります。

仕事の場面で考えてみましょう。上司から教えられて指示されたことは、まず、やってみることが大事です。やりもしないで、「ああだ、こうだ」と言っている人は論外です。しかし、何も考えずにやっているだけでは、物事の本質を見抜く力が身につかないので、仕事の価値を高めることはできませんし、成果を出すこともできません。

「なぜ、このようなことをしなければならないのか」「もっと、良い方法があるのではないか」「新しい技術を使えば、もっと簡単に、もっと正確に物事を進められるのではないか」など、自分の頭で考えて行動することにより、仕事の成果を出すことができるのです。こうした考え方を基本にしていると、仕事を通して自らの能力を高めることができます。

一方で、人の意見を聴かずに、独善的な考え方で仕事をしていると、失敗する確率が高くなります。

新しい仕事にチャレンジするうえでは、「失敗したらどうしよう」と不安な精神状態にならないよう、心を鍛えることも重要です。失敗を恐れない心で、学び、考え、行動し、失敗したら失敗から学び、成功するまで続けることのできる精神力を培うことが。今を生きる私たちに必要なことではないでしょうか。