私が尊敬する明治時代の実業家である渋沢栄一が、座右の銘としていた有名な言葉を紹介します。渋沢栄一という人は、1873(明治 6)年に大蔵省を退官後、民間経済人として活動し、第一国立銀行や東京証券取引所などといった多種多様な企業の設立・経営に関わり、「日本資本主義の父」ともいわれています。
生涯に約 500 もの企業の育成に関わり、論語を基本とした経営を指南した人物です。その渋沢が座右の銘にしていたのは、「吾日に吾身を三省す」という言葉です。
吾日に吾が身を三省す。人の為に謀りて忠ならざるか。朋友と交りて信ならざるか。習わざるを伝うるか。
この論語の意味は、私は毎日、自分の行いについて何回となく反省している。その反省の内容は、第一に、人のためを考えて心を尽くさなかったのではないか、友人と接していて信義に欠けるようなことをしなかったか。学んでいて、まだよく身につけていないのに人に教えていないか。こうした反省によって私は日々成長していきたい、というものです。
今も昔も、自らを省みることがいかに大切であるかがわかります。私たちは、年齢とともに、自らを省みることをしなくなるのです。だから、今一度、この言葉をかみしめることが必要なのだと思います。一日の行動を振り返って、自分は人のために最善を尽くしたか、友人を裏切る言動をしていないか、知ったかぶりをして同僚や知人に話をしていないか。こうした振り返りが、自らを成長させる糧になるのではないでしょうか。
私たちは、人の事よりも自分のことを優先しがちです。自分が大切であり、自分本位で物事を考え行動することが多いのです。利己主義と利他主義という言葉がありますが、人間は、ややもすると利己主義に陥りやすいのです。
しかし、人間関係を良くしたり、良い仕事をする上では、人間性を磨くことが必要になります。自分のことより、まず、他人のことを考えることが重要になるのです。人のために尽くすことが、自分の人間性を磨くことになります。
仕事においては、お客様のために最善を尽くすことが大切であり、職員間の人間関係を良好に保つために、厚い信頼関係を構築することが重要です。そして、知ったかぶりをせずに、知らないことは知らないといい、知っていることでも、自らがきちんと身につけていないことを話すことは避けなければなりません